税務調査と査察調査の違い。マルサにガサ入れされないための対策方法
国税当局が納税者を調査する場合、税務調査と査察調査のいずれかの手段が用いられます。
査察調査はマルサ(国税局査察部)が行うことで知られていますが、調査手法は税務調査と査察調査では異なります。
本記事では税務調査と査察調査の特徴と、マルサにガサ入れされない方法について解説します。
査察調査の対象となる納税者とは
日本は納税者が自主申告・自主納付を行う「申告納税制度」を採用しており、税務調査は申告納税制度を円滑に運営するために行われています。
ただ任意調査である税務調査だけで悪質な脱税犯の実態を解明するのは難しいため、強制的権限をもって犯罪捜査に準ずる方法で調査する、査察調査が実施されます。
査察制度は税務調査と同様、申告納税制度を支え、納税秩序の維持を補助する目的があり、査察調査の対象となるのは、申告納税制度の根幹をゆるがす悪質な脱税犯のみです。
税法には不正の手段を使って故意に税を免れた者に社会的責任を追及するため、正当な税を課す以外に刑罰を科すことが定められていますので、査察調査の結果によっては検察官に告発し、刑事罰に処されることもあります。
税務調査と査察調査の違い
税務調査と査察調査は、調査の対象となる納税者だけでなく、調査担当者に与えられている権限にも違いがあります。
税務調査は任意調査
税務調査は、納税者の同意の下で行われる「任意調査」です。
原則として事前に調査を実施する旨が伝えられ、日時の調整や対象税目・対象期間の説明が行われます。
任意調査であったとしても、正当な理由なく調査を拒むことはできませんので、調査を実施する連絡があった際は、帳簿などの書類を揃える必要があります。
調査担当者は納税地を管轄している税務署の職員が基本であり、売上が大きい法人・個人事業主などについては、国税局職員が調査担当者になることもあります。
ただ調査担当者が税務署職員と国税局職員のどちらであっても、税務調査で実施される内容に違いはありません。
なお無申告事案など、調査を実施する旨の連絡を事前にすることが相当ではないと判断した場合、税務署(国税局)は無予告で税務調査を行うこともあります。
査察調査は強制調査
査察調査は、納税者の同意なく調査が行われる「強制調査」です。
警察が裁判所に令状を取ってから逮捕・捜索するのと同様、査察調査を行う際は裁判所に実施の許可を得てから行われます。
強制調査の場合、自宅や事務所の捜索以外に、証拠となる財産の差し押さえも行われ、調査対象者は差押等を拒むことはできません。
消費税事案・無申告事案・国際事案の3つが査察調査の重点事案として掲げていますが、時流に即した社会的波及効果の高い事案も積極的に告発しています。
また査察調査で脱税が指摘された場合、刑事罰に処される可能性が高いです。
令和3年度においては検察庁に75件告発されており、同年度に行われた117件の一審判決はすべて有罪判決でした。
査察調査を受けないための対策
査察調査は悪質な脱税行為を行っている納税者を対象としており、申告誤りや過失による申告漏れは悪質性が低いことから、一般の方が査察調査を受けることはありません。
節税行為と脱税行為は、合法と違法の違いがあります。
合法的に納税額を減らす手法は節税行為に該当しますが、売上除外や経費水増しなど違法な手段を用いた場合、悪質な脱税行為を働いたとみなされます。
査察調査は不正行為を行っている納税者だけでなく、無申告者に対して実施するケースが多いです。
調査対象者とならないためには、脱税行為を行わないことはもちろんのこと、期限内申告を徹底することも大切です。
なお1年で行われる査察調査の件数は少なく、近年でもっとも実施された平成29年度においても着手件数は174件のみです。
国税当局は限られた査察調査の実施件数で最大限の効果を発揮させるために、脱税犯の中でも、高額な脱税が見込まれる納税者を優先的に調査しています。
万が一査察調査を受けることになった場合の対応
査察調査が実施されれば、調査を拒むことはできませんので、調査担当者の指示に従って対応することになります。
査察調査を受けたとしても、すべての人が告発を受けるわけではないため、意図的な脱税ではないときは、調査担当者に申告漏れや無申告となった経緯を説明しなければなりません。
また税理士や弁護士に通じて、査察調査の対応を行うことも選択肢です。
告発されれば最悪の場合、実刑判決を受ける可能性もありますので、対応が後手にならないよう気を付けてください。
まとめ
一般の方がマルサの調査を受ける可能性は低く、強制調査を受けることは基本的にありません。
ただ実施される調査が税務調査であったとしても、調査自体は拒否できませんし、申告誤りを指摘されれば加算税・延滞税といったペナルティを支払うことになります。
法律に則した節税は合法ですが、法律から逸脱した手法は脱税ですので、税金対策は法律上で認められた範囲内で行ってください。
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