個人事業主が税務調査の対象になる売上規模の基準はあるのか
個人事業主への税務調査は、一般的に売上規模の大きい事業者ほど実施されるイメージがあるかと思います。
そこで本記事では、個人事業主が税務調査を受ける確率と、売上規模など調査対象になりやすい個人事業主の条件について解説します。
所得税の年間調査件数は60万件
国税庁の「令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(※)によると、令和3事務年度に実施された所得税の調査件数は60万件です。
新型コロナウィルスの影響で直近数年の調査件数は減少していましたが、令和3年事務年度の調査件数は感染症が流行する前に近い水準まで回復しています。
税務調査には、調査担当者が自宅や事務所に臨場して調査する「実地調査」と、電話や税務署内で申告誤りを指摘する「実地調査以外の調査」があり、実地調査が行われた件数は3万1千件です。
また最近の税務調査の特徴として、令和4年10月には一部の大規模法人を対象に、Web会議システム等を活用したリモート調査が試行的に行われています。
リモート調査の対象が個人まで拡大すれば、将来的に税務調査件数が現在より増加する可能性もありますので、国税当局の動向は注視しなければなりません。
※参考:令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(国税庁)
個人事業主が調査を受ける確率は10%未満
税務署には毎年2,000万件以上の所得税の申告書が提出されており、令和3年分の所得税の申告件数は2,285万件(※)でした。
所得税の申告書を提出した人の多くは、還付金を受け取るために申告手続きを行う年金受給者や給与所得者ですが、不正還付などが行われていない限り年金受給者等に対して調査が実施される可能性は低いです。
また納税額のある申告は全体の30%弱の657万人、そのうち事業所得者は175万4千人ですので、年間60万件の調査件数を踏まえると、事業所得者の数パーセントは税務調査を受けている計算になります。
※参考:令和3年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(国税庁)
税務調査の対象者になる明確な売上基準はない
売上が大きい事業者ほど税務調査の対象となる確率が高くなるのは間違いありませんが、売上規模は一つの要素にしか過ぎません。
所得税は課税所得金額が大きくなれば適用される税率が高くなりますので、同じ金額の所得漏れが指摘された場合、高額所得者の方が所得税および附帯税を多く支払うことになります。
調査担当者は税務調査で少しでも増差税額を出すことが求められているため、売上規模の大きい事業者の方が税務調査を受けやすいです。
ただ一方で、税務調査対象者の選定は税務署ごとに行われており、事業者の人数は地域によって違いますし、売上規模も異なります。
都心部で活動している事業者は全体の売上が高くなりますので、ある程度の売上がある事業者でも税務調査を受けないことがあります。
反対に、管轄内の事業者が少ない地域の場合、売上規模があまり大きくなくても税務調査の対象になる可能性があるなど、売上規模の大きい・小さいを判断する額は地域差が大きいです。
税務署が積極的に調査を実施する個人事業主の特徴
国税組織全体の人員は約5万6千人しかおらず、調査担当者として活動している職員はその中の一部です。
税務署は人員的な問題で、すべての所得税の申告書を調査することはできないため、優先順位の高い納税者から調査を実施しています。
税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴は、次の通りです。
<税務調査の対象になりやすい個人事業主>
税務調査は、本来納めるべき税金を納めていない(可能性がある)納税者を対象に実施することが多いです。
仮想通貨取引やパパ活など、新たに誕生した業種・市場は、既存の業種等より適切に申告が行われていないケースが多いため、税務調査の対象となりやすいです。
所得税は利益に対して課される税金ですので、利益が発生している可能性の高い無申告の事業者は、税務調査になる確率が上がります。
また事業者は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。
税務調査は複数の税目を同時に調査することも認められていますので、売上が1,000万円を超えた場合、所得税と消費税の同時調査が行われる可能性があるので要注意です。
そして国税当局が近年力を入れているのが、国際課税への対応です。
タックスヘイブンを利用した租税回避は世界的な問題となっており、日本もタックスヘイブン対策を強化しています。
国内取引に比べて海外取引は、国税当局の調査が及ばないと考えている人も多いため、海外取引が多い事業者は要調査対象として狙われやすいです。
まとめ
税務調査を実施するかは税務署が判断しますので、100%調査を受けない状況を作るのは難しいです。
しかし、税務署は当初から増差税額が見込めない納税者を調査するメリットがないため、適正な申告・納税を行うことで、可能な限り調査を受ける確率を下げることは可能です。
事業規模が大きくなると税務調査の対象となる確率は上がりますので、事業が軌道に乗りましたら1度税理士に相談していただき、必要な調査対策を講じてください。
京都市の税務調査対応サポートをしていますのでお気軽にご相談ください。