法人が税務調査を受ける確率。調査対象となりやすい企業の特徴
税務調査は、脱税している企業以外に対して実施されることもありますし、絶対に税務調査を受けないとは断言できません。
ただ税務調査を全く受けたことがない企業があるのも事実ですので、今回は法人税の税務調査を受ける確率と、調査対象となりやすい企業の特徴について解説します。
法人税の申告状況と申告している法人の割合
国税庁が公表している「令和2事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、令和2年度に提出された法人税の申告件数は301万件と、前年比で6万件も増加しています。
法人数は令和3年6月30日時点で322万社存在しますので、90%以上の法人は申告している計算です。
また申告書を提出している法人のうち、黒字の申告割合は35%と、法人の3分の2は赤字申告です。
税務調査は基本的に黒字申告の企業を対象とすることが多いですが、売上を除外するなどして意図的に赤字にしているケースもあるため、黒字法人だけでなく、赤字法人も税務調査を受ける可能性があります。
税務調査を受ける確率は3年間で12.8%
調査担当者が事務所等に訪問し、書類等を確認する調査を「実地調査」といいます。
令和元事務年度および令和2事務年度は、新型コロナウィルスの影響で調査件数は大幅に減少しましたが、感染症流行以前の平成30年事務年度は実地調査が9万9千件行われました。
また税務署において書面や電話による連絡、来署依頼による面接で納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請する「簡易的な接触」の件数は、平成30年事務年度は4万3千件も行われています。
実地調査と簡易的な接触による件数を合計すると14万件以上になり、国税庁によると法人に対する3年間の接触率は12.8%です。
計算上、企業が税務調査を受ける確率は23年間に1度と、非常に低いと感じるられるかもしれません。
ただ法人の件数には、ほとんど活動していない法人や、利益が見込まれない法人、事業規模の小さい法人などが多数存在しますので、実質的に調査を受ける確率はデータよりも高いと考えられます。
法人税の税務調査を受けやすい業種
法人税の税務調査を受けやすいのは、不正発覚割合が高い業種です。
『令和2事務年度法人税等の調査事績の概要(国税庁)』によると、不正発見割合の高い業種は次の通りです。
<不正発見割合の高い10業種>
不正割合が高ければ税務調査を実施する重要度が増しますので、外国人関連の事業や医療、建築・土木は、税務調査を受けやすい業種といえます。
また1件当たりの不正所得金額が多い業種としては、自動車・同付属品製造や貿易、情報サービスなどがあり、これらの業種も調査対象となりやすいです。
急激な売上増加・利益低下の法人は要注意
法人が成長し売上が急激に増加した場合、法人税の納税額が増えますので、応急的な節税対策を講じる企業も少なくありません。
ただ節税対策の中には脱税まがいなものもありますので、売上が伸びている企業は税務調査の対象となりやすいです。
また売上が減少していないのに経費が増加し、利益が下がっている企業も要注意です。
合法的な節税手段を用いている場合は問題ありませんが、経費が不自然に増加していると税務署は脱税を疑いますので、節税する際は並行して調査対策も必要になります。
税務調査を回避する方法
税務調査を回避する方法を3つご紹介します。
調査対策は1つだけでなく、複数を組み合わせることで、より税務調査を受けにくくなります。
適正な申告は調査回避の必須条件
調査担当者は、税務調査で回収した税金の額を実績として求められるため、追徴課税が見込めない法人に対して税務調査をする可能性は低いです。
税務調査により追徴課税を支払うことになるのは、申告内容に誤りがある場合に限られ、適正に申告していれば税務調査を受けたとしても、納税額が増えることはありません。
反対に申告ミス等があれば増差税額が発生し、調査を実施する価値が生まれてしまいますので、調査を回避するためには正しい内容の申告をすることが必須条件です。
帳簿は整理し、領収書・請求書は破棄せず保管しておくこと
法人税の税務調査で多く指摘されるのは、売上除外や経費計上否認です。
税務署は物的証拠を重視する傾向があるため、事業に関係する資料は破棄せず保管しておく必要があります。
たとえば経費計上については、実際に支出が発生しているかが争点になることがあり、領収書などの支出を証明できるものを提示できないと、経費として認められない可能性があるのでご注意ください。
税理士関与の有無で調査を受ける確率は変わる
税理士は税の専門家ですので、申告書の作成ミスは発生しにくいですが、経営者は税の専門家ではないため、税理士が申告書を作成するときよりも計算ミス等が発生する確率は高いです。
法人税の税理士関与割合は90%程度と、関与割合が20%前後の所得税に比べると圧倒的に多く、税理士が関与していないだけで税務署から狙われやすくなります。
そのため節税だけでなく、税務調査の観点からも税理士に依頼するメリットはあります。
まとめ
大企業はどんなに適切に申告書を作成したとしても、申告内容を確認する意味合いで調査を受けることがあります。
ただ中小企業については、本記事でご説明した対策を講じることで、調査を受ける確率を下げることができます。
過剰な節税対策は税務署に目を付けられることもありますので、専門家に相談しながら税務調査対策を行ってください。
京都市の無申告の方の対応サポートをしていますのでお気軽にご相談ください。