社会福祉法人を設立して事業を行うのが難しい3つの理由
社会福祉法人は、税制面の優遇措置や国・地方自治体から補助・助成が受けやすいメリットがある一方、設立するのが難しい法人形態です。
本記事では社会福祉法人の概要と設立手続きの流れ、そして設立が難しい理由について解説します。
社会福祉法人の概要
社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として設立する法人です。
社会福祉事業は社会福祉法第2条で定められている、第一種社会福祉事業および第二種社会福祉事業を行う事業をいい、第一種社会福祉事業に該当する事業には、特別養護老人ホームや児童養護施設などがあります。
主に入所施設サービスに該当する事業が対象の第一種社会福祉事業は、経営安定を通じた利用者の保護の必要性が高い事業であることから、国や地方公共団体、社会福祉法人が運営することが原則です。
また施設を設置して第一種社会福祉事業を経営する際は、都道府県知事等への届出が必要になります。
第二種社会福祉事業の対象となる事業は、保育所や訪問介護、デイサービスなど、主に在宅サービスに該当する事業です。
経営主体の制限は原則ありませんが、第二種社会福祉事業を行う際は届出が必要です。
社会福祉法人を設立する際の流れ
社会福祉法人を設立する場合、株式会社と同様に定款作成や登記手続きを行うことになりますが、所轄庁からの認可を受けないと法人を立ち上げることはできません。
所轄庁は、原則として法人の主たる事務所が所在する都道府県です。
社会福祉法人設立に際しては事前相談・事前協議が必要で、事業所管課では事業開始の可否や開始時期の確認、所轄庁では事業内容や資産状況などの法人設立要件、設立スケジュールのチェックが行われます。
社会福祉法人設立認可申請書を提出し、法人設立が認可されましたら登記手続きを行い、社会福祉法人として活動できるようになります。
事前準備から設立申請、認可が下りるまでには年単位の時間を要しますので、社会福祉法人の設立は、長期的な計画に基づいて行動しなければなりません。
社会福祉法人の設立が難しい理由
社会福祉法人には設立条件がありますので、株式会社や合同会社のように創業者の意思だけで立ち上げることはできません。
また社会福祉法人の設立が難しいのは手続き面だけでなく、事業内容・人員・資金面での条件が設けられているからです。
事業内容の制約
社会福祉法人が行うことのできる事業は、社会福祉法第2条に限定列挙されている、第一種社会福祉事業および第二種社会福祉事業です。
社会福祉法人は社会福祉事業以外に、公益事業や収益事業も行うことは認められていますが、それらの事業を行うことを目的として社会福祉法人は設立できません。
公益事業とは公益を目的とする社会福祉事業以外の事業をいい、収益事業は社会福祉事業や公益事業の財源に充てるため、一定の計画の下に収益を得ることを目的として反復継続して行われる事業をいいます。
社会福祉事業を目的としている場合でも、公益事業や収益事業の事業規模が全事業の過半数を占めることは認められませんので、社会福祉事業を主たる事業とすることが設立する際の前提条件です。
人員の確保
社会福祉法人を設立する場合、評議員・理事・監事は必ず置かなければならず、一定以上の収入規模の法人については、会計監査人の設置も義務付けられています。
評議員の人数は7人以上であり、理事の人数を超える数を置く必要があります。
理事は6人以上、監事は2人以上必要になりますが、役員の地位にあることのみをもって役員報酬を支給することはできません。
また役員となる人材には、欠格条項や親族等特殊関係者の制限が設けられていますので、親族のみで構成された社会福祉法人は設立できないような仕組みになっています。
資産の保有
社会福祉法人の設立する際に大きなハードルとなるのが、資産の保有条件です。
運転資金として年間事業予算の約12分の1以上の資金を用意しなければならず、事業内容によっては運転資金の条件はさらに厳しくなります。
社会福祉施設を経営する法人は、土地・建物などの物的資産を保有していることが前提となりますし、事業施設を建築するための自己資金も必要です。
社会福祉施設を経営しない法人については、設立後に継続的に事業を行うため、原則1億円以上の資産を有していることが条件です。
また、社会福祉施設の運営のために使用する不動産等の基本財産は、社会福祉法人を維持するために必要不可欠であることから、処分や担保提供する場合には所轄庁の承認を受けなければなりません。
まとめ
福祉関連の事業を行う場合、社会福祉法人を設立することも選択肢になりますが、事業内容の制約や人員の確保、自己資金の用意などの条件をすべてクリアする必要があります。
設立するまでには年単位の時間を要しますので、設立の認可を受けるためには事前準備が不可欠です。
社会福祉法人を設立できれば税制上の優遇等を受けることができますので、法人で活動したい場合は計画的に準備を進めてください。
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