資産管理会社を合同会社で設立・運営するメリットと注意点

法人は個人よりも節税できるメリットなどがあるため、個人資産を管理・運用するために資産管理会社を設立する方もいます。

資産管理会社を立ち上げる際の法人形態は、株式会社だけでなく合同会社も選択肢となりますので、本記事で資産管理会社を合同会社で設立するメリットと、注意点について解説します。

合同会社の概要と設立件数

合同会社は、2006年の会社法改正により新設された持分会社で、出資者(社員)と経営者が同一人なのが特徴です。

2021年時点の合同会社の総数は本店97,437件、支店435件で、同年の設立件数は37,072件です。

設立件数は株式会社の95,222件に比べると少ないですが、合同会社の総数は年々増加しています。

合同会社の出資者は有限責任者となるため、会社が倒産したとしても出資額を超える債務を負うことはありません。

また創業者だけで会社を立ち上げることができますので、個人資産を管理・運用する資産管理会社の目的にも合致しています。

合同会社で資産管理会社を設立するメリット

設立費用が安い

節税は手元に残るお金を多くするために行いますので、税金だけでなく支出を抑えることも重要です。

設立時に発生する主な費用は、登録免許税と定款の認証手数料の2つです。

登録免許税は法人登記を行う際に支払う税金で、株式会社を設立する場合、最低15万円支払うことになります。

定款は会社のルールを定めた書類であり、株式会社を設立するためには公証役場で定款の認証を受けなければなりません。

登録免許税と認証手数料は資本金等の額が多くなるほど高くなるため、設立コストを抑えるためには、資本金の額をある程度抑える必要があります。

一方で、合同会社の登録免許税は最低6万円と株式会社よりも低く設定されていますし、合同会社の設立時に定款の認証手続きは不要です。

そのため設立費用を抑えて法人を立ち上げたい場合は、合同会社の方が有力な候補となります。

決算公告義務がない

株式会社は上場・非上場に関係なく決算公告義務がありますが、合同会社は決算公告義務がないため、官報掲載費もかかりませんし、事務作業を削減できます。

決算公告とは、会社の経営成績や財務状況を公にするもので、株式会社は事業年度が終了しましたら貸借対照表や損益計算書などの書類を作成し、株主総会で承認を受けた後、公告しなければなりません。

決算公告義務には罰則規定が存在するので公告を怠ることはできませんし、決算公告するための事務作業は規模が小さい会社ほど負担になるため、公告義務が無いのも合同会社のメリットです。

役員の任期がない

株式会社には取締役や監査役の任期が定められており、任期が満了した場合、役員の改選手続きが必要です。

同じ人が役員を継続することも可能ですが、任期は最長10年と期間が定められています。

また役員を継続するとしても役員変更登記は必要となりますし、登記手続きの際には登録免許税を支払わなければなりません。

合同会社は役員の任期がありませんので、継続して役員として活動することもできます。

「ひとり会社」として活動するのであれば役員を変更することはないので、合同会社は株式会社であれば発生する登記費用を削減できます。

資産管理会社を合同会社で設立する際の注意点

資産管理会社は個人で保有する資産を管理・運用することを目的としますが、資産を効率よく運用するために資金調達が必要になるケースもあります。

合同会社は出資者と経営者が同一人であるため、株式の増資が行えないなど、資金調達の方法が限られています

株式会社は所有と経営が分離しているので、株式を増資することで資金を確保できますし、会社が保有する株式を売却して資金を得るなど、資金調達の選択肢が豊富です。

また合同会社は2006年に新設された比較的新しい会社形態なので、株式会社よりも知名度が低いことが、事業面で影響してくることも考えられます。

たとえば株式会社以外の会社形態はそれだけで敬遠されることもあるので、従業員を集めにくいですし、株式会社よりも信用力が低い分、融資のハードルも高くなります。

なお合同会社は株式会社へ組織変更することができますので、事業規模を拡大するなど、資産管理会社の経営方針を転換する場合、株式会社に組織を変えて活動することも可能です。

まとめ

合同会社は設立コストが安いだけでなく、決算公告義務がないなど、会社を運営する際の費用や事務作業を抑えられることも利点です。

資産管理会社は個人の財産を運用するために存在しますので、出資者と経営者が同一人でも支障はありませんし、事業を拡大する予定がなければ資金調達の選択肢が少ない点もデメリットになりません。

ただし、法人として活動することが必ずしも節税になるわけではありませんので、法人設立のメリット・デメリットを踏まえた上で、資産管理会社を立ち上げてください。

当税理士事務所では、京都市の会社設立や創業支援をしていますのでお気軽にご相談ください。