年金を担保提供することで貸付を受けることは可能なのか

事業資金を調達する際、融資金額や返済期間などの条件次第で担保が必要になることがあります。

一般的に不動産を担保にすることが多いですが、年金受給者であれば、年金を担保にしたいと考える方もいるかもしれません。

本記事では、担保として提供できる財産の種類と、年金を担保に融資を受けられるのかについて解説します。

担保の種類

担保は、債務者が金銭等を返済できなくなった際、債権者が債権を回収するための手段として用いられます。

担保には「人的担保」「物的担保」の2種類存在し、融資を受ける際は片方または両方の担保を求められることもあるので、事前に条件を確認してください。

人的担保は、債務者が債務を返済できなくなったとき、債務者の代わりに返済する人をつけることをいい、連帯保証人などが人的担保に該当します。

物的担保は債務者が債務を返済できなくなった際、債権を回収するために充てる財産をいい、不動産は価値が変動しにくく抵当権も設定できるため、担保財産として用いられることが多いです。

一方で、株式や預貯金など、売却等により債権を回収できる価値があれば、不動産以外でも担保として提供できるケースもあります。

年金を担保にお金を借りることはできない

年金は定期的に振り込まれる金銭ですので、担保としての価値があるように思われます。

ただ年金を担保に融資を行うことは法律で禁止されており、貸金業者は年金を担保に貸付を行った場合、罰則の対象となります。

年金を借入金の返済に充てることは問題ありませんが、年金を担保に資金調達することはできません。

年金担保貸付融資は令和4年3月末で終了

年金担保貸付制度は、年金受給権を担保にして融資が受けられる制度です。

福祉医療機構が実施していた本制度は、利用者の困窮化を招くなどの指摘があり、平成22年12月の閣議決定で廃止することになりました。

最近まで利用することができましたが、申込受付は令和4年3月末で終了しています。

年金受給者が事業資金を調達する手段

事業者が年金を受給する年齢であったとしても、次の融資制度を活用して資金調達を行うことができます。

年金を担保に融資を受けることはできませんが、無担保で利用できる融資制度は多数存在します。

<高齢の事業者でも利用できる主な融資制度>

  • 銀行融資
  • 信用金庫融資
  • 日本政策金融公庫
  • 制度融資
  • ビジネスローン
  • 銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けるのが一般的ですが、日本政策金融公庫は中小企業など、事業規模が小さい事業者でも融資を受けやすいですし、地元の企業であれば制度融資を活用することも選択肢です。

    また創業融資の中には、シニア起業を支援することを目的とした融資制度も存在します。

    ビジネスローンは、銀行だけでなくクレジットカード会社や消費者金融会社も実施している貸付制度です。

    審査期間が短く、すぐに資金調達できるメリットがある一方、金利は高めに設定されているので、返済の見通しが立っている状態で利用するのが望ましいです。

    高齢者が事業資金を調達する際の注意点

    融資は年齢に関係なく受けることができますが、経営者が高齢の場合には、いくつか気を付けるべきポイントがあります。

    後継者が不在だと融資を受けにくい

    法人は代表者が亡くなっても存続しますので、後継者が決まっていれば代表者の年齢が融資の審査で問題になることは少ないです。

    しかし、ひとり法人や後継者が決まっていない企業においては、代表者が亡くなることで事業を廃止することもあるため、代表者の年齢がネックになることもあります。

    そのため融資の申請をする前に、代表者の交代や後継者を指名するなどして、融資元に返済が完了するまで事業を継続することを示してください。

    年金で返済することを前提にしてはいけない

    年金を担保にすることは禁止されていますが、年金を返済に充てることは可能です。

    ただ年金は生活維持のために不可欠な収入源ですので、事業で生み出した利益から返済する前提で事業計画を立てなければ、融資を受けることは難しいです。

    融資限度額が低く設定されることがある

    個人事業主でも不動産など、融資金額に見合った担保を提供できれば、返済期間を長めに設定できます。

    しかし担保提供が難しい場合や、担保としての価値が低い財産を提供することになる場合には、返済期間の短縮や融資限度額が低くなる可能性があります。

    返済期間が短いと毎月の支出額は増えますので、返済計画の見直しや融資元を変更するなど、資金調達のやり方の再検討も必要です。

    まとめ

    以前は年金を担保にお金を借りることもできましたが、現在は年金を担保することは法律で禁止されています。

    企業の代表者が高齢であったとしても、後継者の存在が明確であれば融資は受けられますし、融資の審査では事業実績や返済計画の方が重要視されます。

    資金調達する手段は多種多様ですので、経営状態や必要となる事業資金の額に見合った方法で融資を受けてください。

    当税理士事務所では、京都市の創業融資獲得支援をしていますのでお気軽にご相談ください。