金融機関から提案される節税スキームを利用する際の注意点

金融機関から節税に関するアドバイスを受けることもありますが、必ずしも事業者の利益になる話とは限りません。

アドバイスを鵜呑みにしてしまうと損失を被るリスクもあるため、金融機関から提案される節税スキームの注意点と、専門家から意見を聞くべき理由についてご説明します。

金融機関から提案される節税スキームが危険な理由

節税スキームに費用が発生する場合、費用対効果が高くないと実施する意味がありませんし、合法的な手段でなければ税務調査で指摘される点にも注意が必要です。

事業者にとって有益な手段とは限らない

金融機関から提案される節税スキームには、自社の商品を購入させる目的や融資を受けさせたい動機が含まれていることがあります。

たとえば不動産投資による節税スキームが提案された場合、金融機関は融資をすることができますし、万が一不動産の価値が下がったとしても、金融機関自体が損失を被ることはありません。

長い付き合いの金融機関であれば、利用者にとって魅力のある提案をしてくれるかもしれませんが、事業者が有用な節税スキームかどうかを見極めるのは難しいです。

違法な節税手段は税務調査を受けることになる

法人税などには特例制度が多数用意されており、上手く活用できれば納税額を圧縮できます。

ただ節税効果の高い特例は適用要件が厳しく、要件を一つでも満たしていなければ特例を受けることはできません。

金融機関は税務関係の専門家ではありませんので、特例制度の要件等を正確に理解していないことも考えられます。

要件を満たしていない状態で制度を適用してしまうと、税務調査で誤りを指摘され、追徴課税を支払うことになりかねません。

そのため金融機関から提案された節税スキームを適用する場合には、事業者自身が特例制度を理解した上で用いる必要があります。

税務調査に立ち会うことができない

事業者以外で税務調査に立ち会うことができるのは関与税理士のみで、金融機関の方は税理士資格がないので税務調査に同席できません

税務調査では法令解釈や事実認定が焦点になることが多く、調査担当者に状況や経緯を上手く伝えられなければ、特例や経費等を否認されてしまう恐れがあります。

事業者側と税務署側で法令解釈が異なる場合、調査担当者が納得するような説明を行うことが重要ですし、事実認定であれば、経費の支払いの有無の証明や証拠となる書類などが提示できるかがポイントとなります。

領収書などの保管しておくべき書類等を把握していないと、税務調査で提示することができませんので、節税スキームは税務調査まで考えて対策しなければなりません。

節税スキームは税理士等の専門家に相談すべき理由

節税スキームは費用対効果が得られることも重要ですが、合法的に実施することが何よりも大切です。

税理士は適正な方法での節税を第一に考える

合法的に税金を抑える節税行為は推奨されますが、違法な手段で税金を回避する脱税は厳禁です。

税理士は、税務に関する専門家として独立した公正な立場で納税義務者の信頼に応える、納税義務の適正な実現を図ることが使命です。

金融機関よりも税金関連の知識を有していますし、事業者が適切に申告することを第一に考えます。

税理士が脱税指南をした場合、税理士自身も罰則を受けることになりますので、法的に認められた節税スキームを提案します。

節税スキームが合法であること根拠を提示できる

法律で認められていない方法での租税回避は脱税となりますが、税務調査で節税スキームが脱税行為とみなされれば、重加算税の対象となる可能性もあります。

合法的な手段の節税スキームであったとしても、法令解釈等の違いから適用誤りを指摘されるケースもありますが、税理士が関与していれば節税スキームが合法であることを説明することができます。

また、顧問税理士は事業者に不利な提案をしてしまうと契約解除に繋がりますので、事業者に不利な方法は提案しません

節税スキームが適法なのかを事前に税務署と協議することが可能

税務調査を回避するために、事前に税務署側の見解を知ることも手段の一つです。

節税スキームが合法であることを確認する手段としては、管轄税務署の担当部署に相談する方法と、事前照会による文書回答を受ける方法があります。

税務署への相談は事業者だけでもできますが、質問内容や確認したいポイントを理解していないと、求めている回答が得られないこともあるので注意してください。

事前照会に対する文書回答は、特定の事業者の個別事情に係る事前照会について、文書による回答を行う制度です。

事業者が事前照会を行うのはハードルが高いため、税理士を通じて事前照会を行うことで円滑に回答を得ることができます。

まとめ

節税効果が高いとされる手法でも、事業者の個々の事情を加味しないと実際に享受できる節税効果は不明瞭です。

金融機関から提案される節税スキームすべてが悪いわけではありませんが、税務調査を受けるリスク等を考慮すること、節税に関するアドバイスは顧問税理士や専門家から受けることが望ましいです。

現在有効な節税スキームも、税制改正で活用できなくなるケースもありますので、最新情報を確認の上で税金対策を講じてください。

京都府の税務調査対応サポートをしていますのでお気軽にご相談ください。